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第百二十話 —閉ざされた扉の外で—

Penulis: marimo
last update Terakhir Diperbarui: 2026-01-08 11:27:07

  スイートルームの外。

 静まり返った最上階の廊下には、ホテル特有の柔らかな照明が落ち、床のカーペットが足音を吸い込むようにしんと沈んでいた。

 その廊下の中央に、瑛斗は背筋を真っ直ぐに伸ばして立っていた。

 まるで“柱”のように微動だにせず、外側からの雑音を一切寄せつけない、職務に徹した護衛の姿だった。

 しかし静寂とは裏腹に、瑛斗の胸の内では荒れた海のような波が何度も押し寄せていた。

 表情は平静を保っていても、その心の奥では、言いようのないざわめきが広がっていた。

(……やっと会えたんだな、玲ちゃん)

 胸の深いところで小さく息を吐き、瑛斗はそっと天井を見上げた。

 広がる天井の白い光が、わずかに滲んだように見える。

 それは決して涙ではない。

 だが、胸の奥から何かがこぼれ落ちそうになる感覚に、瑛斗は喉を固く閉ざした。

 あのバリの海沿いの夜。

天城の刺客から生き延びたこと。

 バーベキューをした夜。

 そのすべてが今、胸の奥で静かに疼き始める。

 瑛斗は玲華を守るためにバリへ向かった。

 それは職務であり、桐嶋家の人間として当然の任務だった。

 だがその裏に、ほんのわずか──本当に、かすかな希望があった。

(もし……玲華様が蓮を忘れて、俺を見てくれたら——)

 そんな都合のいい期待を、心のどこかで抱いてしまっていた。

 自分でもわかっている。

 叶うはずのない淡い想いだと。

 しかし、あの孤独な夜、彼女の涙を受け止めるたび、その気持ちは否応なしに胸の奥で膨らんでいった。

 だが現実は——。

 扉の向こうで二人は再び向き合い、抱き合い、泣き合っている。

 飛行機の中で「好きだよ」と伝えられたこと。

それだけで20年の瑛斗の想いは伝えられた。それだけでよかった。

先ほどの、蓮を見つめる玲華の瞳。

それを目の当たりにした瞬間、自分の想いは泡となって消えた。

(……でも、それでいいんだ。彼女がしあわせなら……それで)

 自分に言い聞かせるように、瑛斗はゆっくり目を閉じ、深く呼吸を整えた。

 護衛として、弟分として、そして家族として育ててもらった恩を思い返す。

 玲華は、守るべき存在。それは変わらない。

「瑛斗」

 低く、しかし確かな響きを持つ声が、静かな廊下に落ちた。

 龍一だった。

 少し離れた場所で腕を組み、目を閉じてい
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